【ヴァイオリニストのための解剖学入門】肩甲骨が動きまわれるのって、どんな仕掛けなの?(肩・その2)

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骨格模型ヘンリーくんといちろーたの写真

 今回は、肩甲骨が自由に動き回るためにどんな仕掛けになっているかについて説明します。

 前回は、肩周辺の筋肉のグループ分け……どこから何を動かすのかという働き方によって3グループに分けることができるということ……そして、その第1グループは肩甲骨と上腕骨をつなぎつつ動かしていることを説明しました。

 さあ、「グループ2:肩甲骨を胴体側から位置制御する」について学んでいきましょう。

 これらの解剖学に関連した知識を弦楽器の演奏に役立てるためには、見出し部分だけでも読んでもらえればじゅうぶんです。ですが、詳しく知りたい人向けに、かなり細かい説明もしていきます。読んでいる途中でめんどくさくなったら、どんどん読み飛ばして、太い文字のところだけでも読んでみてくださいね。

肩を包む3つの筋肉群

 肩周辺に着目すると、大きく言って3つのパーツが関係します。胴体・肩甲骨・上腕骨です。この3つのパーツを動かすための筋肉がたくさんありますが、次の3グループに分けて考えることができます。

  1. 肩甲骨側から上腕骨を動かす
  2. 肩甲骨を胴体側から位置制御する
  3. 上腕骨を胴体側から直接動かす

グループ2:肩甲骨を胴体側から位置制御する

そもそも肩甲骨ってどうなっているの?

 肩甲骨は「宙に浮いている」と言われるくらいに、自由な動きを許された骨です。どうやって固定されているのかをまず確かめておきましょう。

肩甲骨は浮いてる?

 このシリーズの初回で簡単に説明したように、肩甲骨はいくつかの繋がりを経由して人間の体の柱ともいえる脊柱につながっています。(肩甲骨〜鎖骨〜胸骨〜肋骨〜胸椎…胸椎は脊柱の一部です)

 肩甲骨は、こうしたちょっとしたつながりに支えられて胴体とつながっています。ですから、肩甲骨は背中の上の方に位置していますけど、胴体と繋がっているというよりも、宙に浮いているといったほうがよいくらいのつながり方なんです。

 そして、肩甲骨は筋肉によって、身体の背中側とつながっています。靭帯による固定ではないのです。

腕の自由は、肩甲骨が浮いているから

 腕が自由に動かせるのは、肩甲骨と上腕骨の関節が自由だからというだけでなくて、肩甲骨が胴体から浮くようにして自由に動けるから、という相乗効果だったんですね。

肩甲骨を姿勢制御する筋肉たち

 肩甲骨を胴体の側から動かす筋肉について、その働き方ごとに紹介します。

肩甲骨を引き上げる
肩甲挙筋(けんこうきょきん)
肩甲骨をどうにでもしてしまう
僧帽筋(そうぼうきん)……肩甲骨を引き上げる・引き下げる・内側に寄せる、腕を側方に引き上げる【外転】に合わせて肩甲骨の関節面を上へ回転させるなどなど。
肩甲骨を内側に引き寄せる
菱形筋(りょうけいきん)
胸の前側から肩甲骨を外側に引き出す・引き下げる
前鋸筋、小胸筋(ぜんきょきん、しょうきょうきん)
もうひとつ……

【水平屈曲】するときに働く……肩の高さに水平にあげた腕を前方に曲げる
烏口腕筋(うこうわんきん)というのもこのグループです。

公園のベンチでヴァイオリンをひきながら・いちろーたの写真

いずれもヴァイオリン演奏に深く関わる動き

 これまでに紹介した筋肉、そして次回紹介する筋肉で、肩周りの筋肉の紹介はおしまいです。これらの筋肉は、大小様々です。働きも様々です。1つの働きしかしない小さな筋肉もあるし、三角筋や僧帽筋のようにいくつもの働きを兼ね備えている強大なものもあります。これらの筋肉は、それぞれ得意分野・不得意分野があり、補い合う関係にあるといえます。

 不正確な分類かもしれませんが、筋肉を使うときには……細やか/大まか、瞬発力/持久力、筋力重視/スピード重視……といったバランスをとりながら、目的とするパフォーマンスから逆算して、体への指示を与えられることが必要なんですね。

 もしもあなたが、特定の関節や、特定の筋肉痛に悩まされている場合は、ある特定の筋肉にばかり負担をかけている可能性があるんです。それを解決するには、頭と脊椎の関係に始まる、身体全体の協調作用をよりいきいきと使いこなしていくことが大事になってきます。

ここで腕の動きアニメのご紹介

【ヴァイオリニストのための解剖学入門】アニメで見る・上肢(腕)の動き《大阪大学整形外科の研究成果に学ぶ》 | 弦楽器奏者に役立つ・カラダのやさしい使い方
僕の関心ごとは腕にあります。ですから、腕の動きについて良いヒントはないかと思っていたら、ありました。この動画はいいですよ。ガイコツのアニメ …
上腕のアニメ。肩も指も。

 この記事の中で紹介しているアニメを見ながらご自分の身体を同じように動かしてみると、これまた面白い発見ができそうです。

次回予告

 次回は、肩周辺のしくみシリーズ最終回「グループ3:上腕骨を胴体側から直接動かす」です。お楽しみに。

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