【ヴァイオリニストのための解剖学入門】腕に自由と強さを!(肩・その3)

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 今回は、上腕が強大に力を発揮するためにどんな仕掛けが用意されているかについて説明します。

 前回までで、肩甲骨の存在によって肩の動きが自由になっているということを説明しました。自由でありながら、繊細さと力強さを兼ね備えている仕組みはヴァイオリニストにとって解き明かしておきたい秘密ですね。

 さあ、「グループ3:上腕骨を胴体側から直接動かす」について学んでいきましょう。

 これらの解剖学に関連した知識を弦楽器の演奏に役立てるためには、見出し部分だけでも読んでもらえればじゅうぶんです。ですが、詳しく知りたい人向けに、かなり細かい説明もしていきます。読んでいる途中でめんどくさくなったら、どんどん読み飛ばして、太い文字のところだけでも読んでみてくださいね。

おさらい:肩を包む3つの筋肉群

 肩周辺に着目すると、大きく言って3つのパーツが関係します。胴体・肩甲骨・上腕骨です。この3つのパーツを動かすための筋肉がたくさんありますが、次の3グループに分けて考えることができます。

  1. 肩甲骨側から上腕骨を動かす
  2. 肩甲骨を胴体側から位置制御する
  3. 上腕骨を胴体側から直接動かす

今回は2大筋肉だけ!

 胴体側から生えていて、直接上腕骨を動かす筋肉は2つだけです。どちらも有名な筋肉のはずです

大胸筋(だいきょうきん)
【水平内転】をします。体の横に開いた上腕を、胸の前まで引き寄せてくるのが仕事です。
広背筋(こうはいきん)
2つ仕事があります。【伸展】と【水平外転】です。ここでいう【伸展】は伸ばしていた腕を身体に向かって引き寄せる、と思っておいてください。【水平外転】は、腕を外に開きながら後方に引いてくる動きです。

 今回は本当にこれだけにしておきます。その代わりに、やってみてほしいことがあるんです。

腕の仕事は胴体でもできる

 大胸筋と広背筋。こいつらを思い出してやってください。そして、演奏に参加させようと思ってみてください。めっちゃくっちゃパワフルなんで、信頼しきって力仕事を預けてみてください。特に水平方向に腕全体を運ぶのなんか得意中の得意です。細かな向きの調整は肩甲骨を介した筋肉たちが完璧にやってくれます。腕を運ぶ指先が「あそこへ行きたい!」って言ってたら、「おい、大胸筋!」「たのむぞ広背筋!」とどんどん仕事を振ってみて欲しいんです。それだけでずいぶん変わります。

 「肩がこりやすい」「楽器が重い」「弓使いが頼りない」など、諸問題があるときに、胴体の強い大きな筋肉のことを思い出してみて欲しいんです。

ここで腕の動きアニメのご紹介

【ヴァイオリニストのための解剖学入門】アニメで見る・上肢(腕)の動き《大阪大学整形外科の研究成果に学ぶ》 | 弦楽器奏者に役立つ・カラダのやさしい使い方
僕の関心ごとは腕にあります。ですから、腕の動きについて良いヒントはないかと思っていたら、ありました。この動画はいいですよ。ガイコツのアニメ …
腕全体のアニメ。肩も指も。よくみるとほんとに細かく動いています

 この記事の中で紹介しているアニメを見ながらご自分の身体を同じように動かしてみると、これまた面白い発見ができそうです。

肩シリーズのおわりに

 ヴァイオリニストをはじめとする弦楽器奏者が、解剖学を学ぶ機会はそうそうありません。かといって、医療の専門家ほどの深い精密な知識が必要なわけでもありません。「この関節は、本当はこういう動きをするんだけど、多くの人はこういう勘違いをしている」ということが分かるだけで充分だったりします。

 ですから、私が書いてきたものを、解剖学の専門家がお読みになったとしたら「不正確だ!」とお叱りを受けるところもあるかと思います。もしも、実際の体の様子と違いすぎるようならば、是非教えていただきたいと思っています。

 そして、これからもこうした「弦楽器奏者のための解剖学入門」と称して、自分が学んで役に立った知識として紹介していくつもりです。

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