指導者・演奏者が練習に必要な《観察》を磨くエクササイズ【判断を留保しつづける】〜練習とは何か?「わからない」でもない「わかった!」でもない、変えるための試行錯誤をとことん許す

2014/01/27

 指導者に必要なスキルのひとつが《観察》です。《観察》を磨くためにどんなトレーニングをしていますか?

 観察を磨こうとする人におすすめするエクササイズ……というかアイデアがあります。その1つが【判断を留保する】ということです。

 ひとつ具体例をあげてみます。

 楽器の演奏で言えば、「何が起こっても、どんな音が出ても1楽章を演奏し続けよう」「どんな音が出ても、1小節目から10小節目までは演奏をしつづけよう」と決めておいてから始めるということです。

 簡単なことですよね?なぜこれが大事なのか、今のいちろーたの理解のレベルで書いておきます。参考にしてみてください。

「判断を留保する」とは

レッテルを貼らずに、ただ見たままを受け取る

 あることを認識したとき、ただ情報として受け取っておくということです。演奏に即していうと、「いまのは良かった/悪かった」とか「イントネーションが高い/低い」「テンポが速い/遅い」「ここは●●長調だ/▲▲短調だ」「これはトニック/ドミナント/サブドミナント」とかいう《レッテルを貼るのをおあずけにする》ということです。

「判断を留保」してみると何が起こる?

 ひとことで言うと、得られる情報が増えます。

練習中に「判断を留保する」とどうなる?

 判断を留保する、と決めてみると、練習の意味が変わってきます。単なる反復練習をする必要がなくなります。

やりたいことをやれるようにするための試行錯誤が練習だ

 今の僕の「練習」の定義はこれです。

 「やりたいけど、思うとおりにできてない」「なんだかさっぱりわからない」を抜け出すためにアレコレ試すのが練習だとおもうからです。

 この「わからない」もレッテルのひとつです。「なんだかわからないけど、いまは、ただ見続けよう・聴き続けよう」とするのが判断の留保です。普通は「わからない」と思った瞬間から、せっかく入ってきている情報を遮断して捨ててしまうことになります。ただし、「わかりたいために、いまはただ見たことを受け取り続ける」と決めておくと、見たことをあとで思い出せてしまうんです。結果として得られる情報量は増えます。

 逆に「わかった!」と思ってしまっても情報の取捨選択が働き始めます。「わかった」ことに対して都合のいい情報の取捨選択が始まってしまうんです。まさにレッテルを貼ることになってしまうのです。ですから、「わかったようで、まだ、今の自分にはわからないこともあるかもしれない」という意味で「ただ見たまま・聞いたままを受け取り続ける」ことが、観察を豊かにするために大事なんです。

「わかりたい」からこそ「いまは、ただ受け取るだけ」をやり通す

 一見放置しているようでいても、「わかりたい」という心の働きが、五感を通して蓄積した《必要とは思わずスルーしてしまった情報》をものすごいスピードで検索しなおしています。

 もう一度書きますが、楽器の演奏で言えば「何が起こっても、どんな音が出てもここからここまでを演奏し続けよう」と決めておいてから始めるということです。

まとめ……観察を磨くには

 観察を始める前に「ここまでは、観察に徹しよう。レッテルを貼るのは待つことにしよう」と決めておくことが大事です。

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