もしかして、バイオリンをアゴで押しつぶしていませんか?
「バイオリンが落ちないように、アゴで支えなさい」
……こんなふうに教わったことはありませんか?
たしかに、バイオリンを演奏するときに、アゴあてを使ってバイオリンを支えるときもあります。
ですが、演奏している間じゅう、ずっと同じ力で固定し続ける必要はありません。
なぜ、アゴあてを使うのか?
バイオリンを構えるときに必要なことは、バイオリンと体の位置関係を、演奏にあわせて最適に変え続けることです。
そのために使う力を、いつでも発揮できるようにアゴあてを使います。
アゴあてを使うときの注意点は2つ。
・いつでも(バイオリンと体の位置関係を最適化するために)バイオリンに力を伝えられるようにしておく
・いつでも(その力をコントロールするために)頭と首を動けるようにしておく
この2つに気をつけましょう。
おまけ……「力を抜きなさい」は実行不可能?!
効き目が再現しない言い方、再現する言い方
アゴあてをギュッと締め付けてしまいがちな生徒さんに向かって、ついつい言いたくなる言葉があります。
それは……
「力を抜きなさい」
「もっとリラックスして」
「脱力しなさい」
「ふわっと持ちなさい」
いまここに書いた4つの言葉は、かつてわたし自身が、教えを請われたときに使っていた言い回しでした。いまは使っていません。
効き目が再現する言い方と、再現しない言い方にはどんな違いがあるのでしょうか?
大まかにいうと2つのポイントがあります。
・脳の認知機能への誤解
・筋肉のできることへの誤解
この誤解をどう克服するかが、よりよい指導を目指す教師にとって自己研鑽を重ねるための重要な着眼点となります。教師自身の為だけでなく、生徒さんの中に刷り込まれている誤解を取り除いてゆく技術として習得する人が増えてほしいものです。
この「的確な言葉の使い方」ができるように、どう心がければよいかという観点から、このブログを読み解いて頂ければいままでにないバイオリン学習の糧となると信じています。
指示の意図~なぜその言葉を選ぶのか?
指示を与えたときに、教師が意図したとおりに改善が見られればラッキーなのですが、必ずしも効き目が再現しない言葉づかいは避けた方が賢明です。
言葉によって起こってほしい動きを指示するなら、動きの主体を明示し、どの方向へどのように動いてほしいのかを明確にする……という考えで言葉を選ぶほうが、言葉を受け取る人を混乱をゼロに近づけることができます。
このときに役立つのが、解剖学の知識を、演奏の動きと結び付けて説明できる力です。
解剖学の用語をまるまる覚える必要はありません。自分の動きをより深く知り、細かな動きの違いを見分けて、楽器の演奏をより適切に指導できるようにするために学んでおくと、レッスンを受けた生徒さんもその教えを継承しやすくなります。
レッスンにおける解剖学の有用性や、動きをアドバイスするための言葉づかいについては、指導者であれば探求する価値のある領域です。このブログでも、わたし自身が心がけていることとして折に触れて記事の中でご紹介しています。
次回(アゴあて編・3)に続きます……。
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