【バイオリニストのよくあるカン違い】「肩を使いなさい!」……アップボウ(上げ弓)のとき、右肩を持ちあげていい理由・持ちあげてはいけない理由
2014/07/16
バイオリニストのみなさん、アップボウのときに、右肩を無意識に持ちあげていませんか?
弓を動かすとき、アップボウで……特に《弓のまんなかから元にかけて》……肩を持ち上げることをしているひとを見かけることがあります。みなさんのまわりではどうですか?ご自身ではどうでしょうか?
「肩で弓を持ちあげる」というカン違い
弓を動かすとき、肩の上げ下げは役に立ちません。
もうちょっと正確に言います。肩を動かして得られるのはなにかというと、弓の運動量ではありません。肩を使うことで得られるのは《弓の動きの自由度》が増えるということです。弓の動きの自由度がました結果として、運動量の増大が得られます。
実験してみよう!
肩の動きと、ボウイングの関連性を確かめる実験を紹介します。
【実験1】ふつうにボウイング
楽器をかまえて、ふつうにボウイングしてみましょう。開放弦でかまいません。
どんなことに気づきましたか?特にないでしょうか。ふだんと変わりがないかもしれませんね。
【実験2】肩は動いてはいけない
楽器を構えます。ボウイングするんですが、次のように思ってください。
肩は動いてはいけない
どんなことに気づきましたか?
弓の動く速さや、弦と弓毛の接触の様子はどう変わりましたか?
弓先や弓元での動きはどう変わりましたか?
弓を動かしている自分のことは、なにか気が付きましたか?何が見えていたか、何が聞こえていたか、体の動きの早さや大きさは【実験1】とくらべてどう変化しましたか?
【実験3】肩も動いていい
楽器を構えます。こんどは、「肩は、うごいていい」と思ってボウイングしてみましょう。
肩は、動いていい
どんなことに気づきましたか?
弓を動かすための労力、弦と弓毛の接触の様子はどう変わりましたか?
弓先や弓元での動きはどう変わりましたか?
弓を動かしている自分のことは、なにか気が付きましたか?何が見えていたか、何が聞こえていたか、体の動きの早さや大きさは【実験2】とくらべてどう変化しましたか?
実験はここまでです。
「肩を使う」ってどういうこと?
そもそも、肩という言葉は、色んな意味を持っています。ですから、注意深く意味を読み取る必要があります。
たとえば、バイオリンの先生が「肩を使いなさい」と言っているときには、「肩を上げ下げしなさい」という意味で言っているとは限りません。どうして「肩を使いなさい」と言われたのかを確かめることが必要ではないでしょうか。
バイオリン演奏指導において「肩を使いなさい」という言葉が使われるのは、「肩が止まっているようにみえる」という場合が多いようです。
演奏の不都合をみつけた時に、
「肩が止まっているように見える」
と思ったなら、
「なぜ、肩を止めているのだろうか」
と、考えることが必要です。
・観察
・分析
・計画
・実験
という手順を踏んで、演奏を変える手順を進めてゆきます。
観察→「肩が動いていないように見える」
分析→「肩を動かしてはいけない、と思っているかもしれない」
計画→「肩を動かしてもいい……というアイデアを使うよう提案してみよう」
実験→「新しいアイデアを使うとなにが起こるか、みてみよう」
新しいアイデアをどう考えればいいのでしょうか。
その方針として役に立つことが1つあります。
「否定形の命令文を、肯定形に言いかえる」です。
もうちょっと言うと
「○○してはいけない」という言い方を
「○○してもいい」という言い方で表現してみる、ということです。
たとえば、「肩を動かしてはいけない」であれば、
「肩を動かしてもいい」という具合です。
みなさん!ヴァイオリンの技術を身につけてゆくときに、「○○してもいい。でも、○○しないように」といいきかせながら練習していませんか?
ぜひ、普段のちょっとしたこと……楽器をかまえるとき、弓を返すとき、ポジションを変えるときなどに、こうした小さな小さな「○○してはいけない」という声をかけていないかどうか、調べてみてくださいね。