スズキメソードの創始者・鈴木慎一氏が、ミッシャ・エルマンにこうたずねたそうだ。
「バイオリンを演奏するうえで、もっとも大切なことは何でしょうか?」と。
彼は、そっと親指を立ててみせたそうだ。
親指が大事
では、親指を大事にするというのはどういう事でしょうか?説明できますか?
右手の親指と、左手の親指。役目は違うようで、ほんとうの役割は同じことをしています。
親指は方向性を与える
これが、親指を大事にする意味です。
親指あっち!こっち!エクササイズで意識付けしているのはまさにこのことです。
(ここをクリックすると《親指あっちこっちエクササイズ》の説明記事にジャンプします)
弓を持つとき、楽器を持つとき、親指は「つかむ」動きの主役に見えるかもしれませんが、じつは違います。
楽器を持つときの指の動きをよくよく観察してみてください。
楽器が自分のほうに近づいてくるために、腕がどう動いてきましたか?
どの指が楽器に向かっていますか?
楽器に最初に触れたのはどの指でしょうか?
楽器を持ち上げようとするとき、親指は何をしていますか?
5本の指がモノを持つとき、親指は他の指が動きやすいように動くことが多いです。
たとえばコーヒーカップをつかんで、口の中へコーヒーを流し込もうとするときに、親指はコップの向きの微調整が主な仕事になります。親指が固まっていると、指ではないところでコップの角度の微調整をすることになります。たとえば、くちびるやあご、頭の角度を変えたりしている人はいませんか?
というわけで、親指はつかむための力は、発揮してはいます。ですが、ほかの指の動きに応じて、バランスを取るために必要なだけの力で動くのが、本来の使いかたです。
弓を持つ指がつっぱりやすい人に教えるときに、役立つアイデアかも知れません。
楽器を支えるときに、左親指がつっかい棒になって動けなくなっているときに役立つかもしれません。
動きのクセは人それぞれに、練習を積み重ねてできるようになったテクニックの裏の顔でもあります。
親指がつっぱってうまく動けないときには、「持つのは、指全部、手のひらも手首も動いていい」と思ってバランスを変えながら持ってみるとうまくいく場合があります。