レッスンふりかえりノート(Sさん、バイオリン)「ビブラートをやりたい」
2015/03/15
2014年3月27日
こんど小学5年生になるSさん。いままではお母さまが見守るなかでのレッスンでしたが「ひとりで受けたい」とのことで、お母さまは別室で控えておられました。
さて、今日はどんなことをやりたいのか、いま一番気になっていることがどんなことか、Sさんにきいてみると……「ビブラート!」
ビブラートは、いっぱいある!
「ビブラートは、たくさんあるんだよ」と私は言いました。
早いビブラート、ゆっくりのビブラート、大きなビブラート、ちいさなビブラート……ほかにはどんな種類があるでしょうか?
あっ、ビブラートしないのもビブラートかもしれませんよ!?
ビブラートを使い分ける!
どんな曲の、どんな場所で、どんなビブラートをつかうことがふさわしいのでしょうか?
どの曲も、同じビブラートしか使わないなんて!
ビブラートの《やり方》も、いっぱいある!
ところで、ビブラートをやるにはどんな方法があるでしょうか?
バイオリンの場合は……弦と指のふれあいかたを変えることで、弦の長さを変えて音程が変わる=弦の長さ方向に指を揺らして音程を変える……これがほとんどのバイオリン奏者が思っているビブラートのやり方です。じつは、別のやり方もあります。
もう一つのやり方とは、弦の長さ方向とは直角に交わる方向に指で弦を押しあげる・引っ張るなどして、弦の長さや張力を変化させて音程を変える……そういうビブラートも可能です。ヴァイオリニストでこれをやっている人は、あまり見かけませんが可能なことです。ギターをやったことのある人には馴染み深いかもしれませんね。(参考:ギター ビブラート - Google 検索)
じつは、2つ目の方法をちょっと変えたビブラート方法もあります。弦に指で触ったら、その指を指板の方向へ押し込んでいきます。すると、ほんのわずかですが音程が変わります。ビブラートとはいえないくらいの変化かもしれませんが、音程を変える、あるいは、音に変化を起こすために左手指が持っている可能性を確かめるには、ちょうどよい実験だと思います。
音程をどう変えるとビブラートになる?
これは音楽的な問題とも言えます。
元の音から低い音へ、そして、低い音から元の音へ……こういうビブラートもあるでしょう。元の音から高い音へ、そして、高い音から元の音へ。こんなものはビブラートとは認めない人もいるかもしれません。
ビブラートとは、どんな音の変化を言うのでしょうね。そういうことを考えることも練習の1つです。
言葉とともに、じっさいにバイオリンを使って、音を出して「これはビブラート?」「これもビブラート?」「さっきまで、Sさんがやってたのはこれ」「新しく覚えたのは、これと、これと、これ。ああ、こういうのもあるよね」という具合に、私がやっているところも見てもらいました。
非常識なビブラート練習法
- 非常識ビブラート・その1「おおげさビブラート」
- いままでやっていた方法を大げさにしましょう。そうですねえ、音程のゆれ幅を2〜3倍くらいに広げてみましょう。
- 非常識ビブラート・その2「こんなのビブラートじゃない!」
- 「こんなやり方ではビブラートと認めてもらえない!」と思っているやり方で音程を変えまくってみましょう。それと似ているけど別の実験として、「こんなのビブラートに聞こえない!」というふうに音程を変えてみることもやってましょう。
- 非常識ビブラート・その3「忍法☆こっそりビブラート」
- 先生に見つからないように、こっそりビブラートしてみましょう。音も変わらないくらいに、でも、ビブラートの動きはするんです。
この3つの練習法を試してみましょう。
どんな意味がある?
ひとつには、先入観をこわすこと。もうひとつは、自分のやっていることを見て、聞くこと。このふたつが練習の効果を測定する観察眼を磨きます。
特に、《その2》のなかにある2つの違いにはお気づきになりましたか?音程を変えるためにできることを見つけることと、ビブラートに聞こえるような音程の変え方を見つけることとは別のことだということです。
音楽教師の領分?
「正しいビブラートを教える」には、「ビブラートとは何か」を教えることと、「ビブラートをするために何ができるか」を教えることが必要です。「ビブラートとは何か」を教えるというのは、《ビブラート》と《ビブラートでないもの》をどう区別すれば良いかを教えるということであり、《どんなときに、どんなビブラートを使えばよいか》ということを教えるということではないでしょうか。これこそ音楽教師の出番ですね!
ということで、《ビブラートを実行するために、何ができるか》《どう体を使うか》ということも、ビブラートを学ぶ時には補足する必要があります。