左手ピチカートが苦手な人、指まわりの悪い人に共通の《指の動き》……名人たちとの違いとは?

指にも、腕にも、得意な動きがあります。
ということは、苦手な動きもあります。

フィンガリングが苦手な人は、
指や腕が得意とする動きを封印して、
苦手な動きだけでやろうとしている可能性が高いです。

私たちの手首から先にある「手」は、次の2つの仕事をするためにあります。

名人と呼ばれる弦楽器奏者や、偉大な指導者たちは
こうした動きの特性を、奏法に応じて組み立てて使い分けています。

では、どうすればよいのでしょうか?
難度の高いテクニックとされる「左手ピチカート」を手がかりにして、いっしょに考えていきましょう。

左手ピチカートにお困りではありませんか?

得意な動き、苦手な動き

指にも、腕にも、得意な動きがあります。
ということは、苦手な動きもあります。

左手ピチカートが苦手な人は、
指や腕が得意とする動きを封印して、
苦手な動きだけでやろうとしている可能性が高いです。

今回は、このことを調べましょう。

解剖学の知識を借りて、知っておくだけでテクニックが飛躍的に向上する場合があります。

弦を押さえる=握る、弦をはなす=ひらく?

私たちの手首から先にある「手」は、次の2つの仕事をするためにあります。

・物をつかむために、握る
・物をはなすために、ひらく

どちらが得意かといえば、握るのが得意です。
どちらが苦手かといえば、ひらくほうが苦手です。

試しに、手を握り続けてみましょう。
いつまで握っていられるでしょうか?

野球
剣道
綱引き
フリークライミング

電車のつり革、てすり
サーカスの空中ブランコ

車いすの車輪
自転車のハンドルについているブレーキ

これらは、作動させるときに、握るようにできています。
道具から手を離すと、生命に危険が及ぶものもありますね。

では、手を開いてみましょう。
指を手の甲の側へ開きすぎるくらいに、思いっきり開き続けましょう。
どれくらい、力強く、開きっぱなしでいられるでしょうか?

何分間、フルパワーでそれを続けられるでしょうか。

もうひとつ、実験しましょう。

手を握ったまま、手首・肘・肩を、いろいろな方向へ曲げてみましょう。

では、

手を開きまくって、指を手の甲に反らせまくって、
手首・肘・肩を、いろいろな方向へ曲げてみましょう。

どちらのほうが、思い通りに動かしやすかったですか?
どちらのほうが、動きに抵抗を感じましたか?

手を握ることと、ひらくこととは、
こんなにも、動きの性質がちがうものです。

骨格模型ヘンリーくんの手を取るいちろーた

左手のピチカートを始めとする、
バイオリンのテクニックは、

左手だけでなく、右手も、

精妙にコントロールされた、かつ、力強く素早い動きで、精妙に組み立てる必要があります。

往復運動 v.s. まわる運動

左手ピチカートを始めとする、
左手の《フィンガリング》(指まわり)のテクニックに関する悩みの多くは

「弦に触れる・はなす」という目的を達するために、

「弦を上から押さえる、上へ持ちあげる」

という、《指の往復運動》をしなければならないと思い込んでいることに由来します。

じつは、《つかむ》は指を指板から離すときにも、動きとして使うことができます。

それが、はじく動きとなって現れるのが、左手ピチカートです。

指を動かすために、指自身の可動性だけでなく、肘関節の運動が参加する好例です。

超一流の名人や、スムーズに上達してゆく人の演奏動作を観察してみると、
指の動きが、弦に向かって直線的な往復運動をしているわけではないのです。

「弦に触れる・はなす」という目的を達するためには、
さまざまな、指の可動性・腕全体の動きを活用することができます。

小指を弦から離す動きに、「手を握る(指を曲げる)」動作を用いるには、
例えば次のようにすることができます。

かりに、小指がA線に触れているとしましょう。

動かしたいのは小指。
指板に触れた小指を握りこみ、A線から、E線方向へ向けて動かし、
親指・人さし指はネックに触り続け、
手のひら(小指の付け根付近)はネックから遠ざける

関節の動きに着目して、解剖学の言葉を借りて説明すると、
左手小指を弦から離す時のうごきは、こういう言い方ができます。

小指を屈曲させ、
手首は伸展(背屈)させ、
肘は伸展させつつ、回内させ
肩関節は屈曲・外転・挙上させ……

「指を回す」と言えばよいでしょうか。

フィンガリングの出来不出来を言い表す言葉として「指が回る、回らない」という表現があるのは、実に面白いことだなと思いました。

メニューインは、バイオリン演奏に関する動作の極意が「波動運動」にあることを説いています。(『メニューイン/ヴァイオリン奏法』に詳しいです)

波の動きからイメージするのは、直線的な運動ではありません。カラダが本来もつ動きを組み合わせて、演奏に必要な動きを作り出すための、知恵ある造語だと思いました。

指導の際の、こうした言葉づかいもまた、興味深いものではないでしょうか。


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