【緊張克服法】ぼくが本番でやっていること……聴衆に自分と楽器を見せる

 日曜日に20名ほどの集まりに招かれて、バイオリン演奏をしてまいりました。

 人前で演奏するときには、程度の差はあるにしても、どうしても緊張します。

 今回は、その緊張をどうやって演奏をするエネルギーにかえていくか、というお話です。

伝えたいものをつたえるために、何をやってもイイ

 ボクには舞台に上がるときに思うことがあります。「伝えたいことを伝えるためなら、自分のできることをなんでもやらせてもらおう」と思うことです。

 自分に許された範囲で、やれることをみつけてやっていくんです。

 たとえば、楽器を持っていて、持ち時間が許すなら、演奏をより楽しんでもらうためにどんどんしゃべります。楽器を見たことない人がいたら、見えるように見せて、楽器から音が出る仕掛けの説明もしますし、楽器の歴史や、演奏する作品のこともお話しします。

 場合によっては、どうして今日この曲を演奏することにしたのかということもお話します。自分がどうしてバイオリンを演奏しているのかという思いを語る日もあります。ふだんどんな仕事をしているか、どんな思いで練習時間を作っているかという話をしたこともあります。

 純粋に演奏だけを聞かせてほしいと思っているお客様もいることでしょう。

 なんで、ボクは演奏以外にそんな話をするのでしょうか。もしかしたら、ボクは自分の演奏だけでは自分の思いを語り尽くせないと思っているからかもしれません。優れた演奏家なら、言葉は要らないのかもしれないですね。

いちろーたはこう思う

自分を見せるために舞台がある

 「見られている」ではなく、自ら望んで「見せる」「聞かせる」と思えたときに、ぼくは舞台での極度の緊張に怯えることがなくなりました。

 どんなに小さな舞台でも、どんなに大きな舞台でも、自分を見せるということに変わりはありません。自分だけでなく、楽器もみせているんですよね。そして、自分と楽器を使って、お客さまに作品を聞かせるわけです。

 私が今までに経験した、もっとも小さな演奏の舞台は、畳の部屋にお客さまがふたりでした。最も大きな舞台は、福岡ドームの中央の特設ステージでした。しかも、中継カメラが入って九州各地にその模様が放映されました。

 どんな舞台でも、演奏する自分と、それを楽しみにしているお客様がいるという本質に違いはありません。見られているのではなく、見せているという能動的な態度を持つにいたったときにさまざまなことが変わっていったように思います。

-ボクの体験談