【弦楽器奏者のお悩み相談室】ビブラートを実現する腕のしくみとは?(ビブラート再入門・第2回)

2016/05/21

はじめに

左手テクニックにおけるビブラートの位置づけとは?

 ビブラートは、左手の基本テクニックを組み合わせたものです。

 「指で弦にふれる」「ポジション移動をする」このふたつを組み合わせるとビブラートの動きになります。

 ビブラートにおける、指の仕事は……「指が弦に触れておく」です。指以外のカラダ全部(特に手首・ひじ・肩という腕全体)の仕事は「指を根こそぎ動かす」です。そして、一定の範囲内で音程が変わるように「指」と「指以外の腕全部」のバランスをつくることが奏者の仕事です。

 「ポジション移動」するための動かし方を、片方向だけに動かせばポジション移動やポルタメントができます。何回も往復させると、ビブラートやシェイクになります。

ビブラートは何をすることでしょうか?

 謎多きビブラート。ビブラートは、どこからかけたらよいのでしょうか。どこから始まって、どこにかかるものなのでしょうか。

 ビブラートが鳴っている弦を、揺り動かして歌わせているときに、私たち演奏者自身は何をしているでしょうか。弦に触れている指はどうなっているでしょうか。指とつながっている手首はどう動いているでしょうか。手首が動けるようになるための、肘や肩の動きはどうなっているでしょうか……。ビブラートをできるようにするために、私たち演奏者にできることはどんなことがあるでしょうか。

 今回もビブラートについて考えていきます。特に、ビブラートに関する勘違いを見つけるために、私たちの腕のしくみについて確かめていきましょう。興味のある方はどうぞお付き合いくださいね。

ビブラートに役立つ腕のしくみ

肩にとって「真横は後ろ」「まっすぐは前」だった!

 あなたの肩はどこにありますか?胴体の前後、横、上下?肩がどこにあるのか、あらためて調べてみましょう。

 まず腕を床に向かってたらしてみましょう。肘の位置はほとんど変えずに、でも、肘を直角にまげて指先を前方に向けます。いわゆる「小さく前へならえ」と同じことなんですが、これをやってみましょう。

 そして、肘の位置をなるべくそのままで、曲げ具合もなるべくそのままに、指先を体の外側に向けてひらいてゆきます。ある程度のところまでひらくと、肩を後ろに引きたくなりますが、そこが肩にとっての「前」と「後ろ」の変わり目、つまり「肩にとっての真んなか」です。(下のイラストで、体の外側にひらいたくらいのところが「肩の真んなか」)
illust-kadouiki-kata4_thumb

 肩を後ろに引くのをやめて、「肩にとっての真ん中」から、曲げていた肘をのばして、指先を身体からはなれる方へと、ゆっくりさしのべてみましょう。

 ざっくりいうと、胴体の上に乗っていて、胴体の前の方から床に向かってぶらさがっています。腕は、胴体の「やや前」にむかっています。真横ではないのですね。

肘は2種類の動きができます

 肘には2種類の動きがあります。ひとつは「折り畳む/伸ばす」、もうひとつは「手のひらを裏返す」です。

 先ほどの「小さく前へならえ」の状態で、手をむすんで親指を立ててみましょう。親指方向へ「折り畳む/伸ばす」ができます。そして、小指を中心に親指の向きを変えるのが「手のひらを返す」動きです。

手のひらも「指」です

 手のひらを、やさしく触ってみると骨があることがわかります。長い骨は指の骨です。いくつかの、四角い骨もあります。これが手首の動きと指の骨の動きを、うまく調整してくれる手の骨たちです。

 指の骨は、手のひらの中からはえてます。しかも、手首に近いところからはえていて、わずかながらも手のひらの中で、指の骨は自由に動けます。

「手首」の動きは2種類

 手首の動きは2種類あります。やってみましょう。

 ひとつは「おいでおいで」とか「ドアをノックする」ときの動きです。
(屈曲 クッキョク・掌屈 ショウクツ/進展 シンテン・背屈 ハイクツ)illust-kadouiki-te1_thumb

 もうひとつは、手首から先だけでする「バイバイ」とか、手のひらを膝小僧に乗せて手のひらだけで左右になでるような動きです。
(尺屈 シャックツ/撓屈 トウクツ)illust-kadouiki-te2_thumb

 ざっくりと、腕の仕組みをみてみました。

 次回は、これらの仕組みを活用するための簡単エクササイズを紹介します。

前回記事【弦楽器奏者のお悩み相談室】ビブラートって、どう教わりましたか?(ビブラート再入門・第1回)

-フィンガリング