チェロ:「クレッシェンド……スタッカートも移弦もあるし何から手をつければいいの!?」(奏者の仕事は、弓毛と弦をこすること。そして、クレッシェンドの始末のこと)
2015/03/15
曲のなかでスタッカートがうまくいかない。
単体で練習すればうまくいくのに……どうしたらいいの?!
チェロYさんのレッスンのお悩みです。前回の記事でレッスンの一場面を紹介しました。今回はその続きです。
今回の要点
- 「楽譜に書いてあるとおりに」「こする」をやろう!
- 「クレッシェンド」の始まりは「いままでのまま」
演奏の中で、混乱が目立ったのは曲の中の「クレッシェンド」の部分。ここに焦点を当ててみることにしました。
何をどうしたいですか?
チェロの先生が言うにはスタッカートによって短い音を際立たせ、長い音との違いを強調します。でも、移弦もありますし、楽譜にはクレッシェンドが書いてあります。
Yさんが演奏をしてくれたとき、弓毛をどの弦に乗せるか、左手指はどの弦に触れさせるのか、それぞれの動きをいつ始めるのか・いつ終えるのか……が明確ではありませんでした。
ひとつずつ、見ていきましょう。
チェロで音を出すために何をしましょうか?
一番シンプルなこと「音を出すために、こする」
左手で弦を整える
右手は、弦に弓毛をくっつけて、こする
「音を出すために、こする」これが基本です。
どんな具合に「こする」?
ある音符をみてください。その音符を演奏するために、どれくらいの時間、音を出し続けますか?
そのために、どんなこすり方をしたらいいでしょうか?
- 弓毛を弦にくっつけるとき、弓元から何センチの場所をのせますか?
- その弓毛を乗せる弦は、どの弦ですか?
- 弦の、駒から何センチ離れた場所に弓毛をのせますか?
- 弓毛と駒の角度は平行にしますか?それともあえて何度ずらしますか?
- 弓毛を、弦にくっつけてこするのに何センチ弓を動かしますか?
- ……などなど。
ひとつの音符を、弓毛で弦をこする音によって表現するために、思いつくことを全部身体にやらせましょう。
楽譜を読むこと
どんなスタッカートにする?
ここで問題になるのが、楽譜に書いてある音符をどんな音にしたらよいかということです。
スタッカートなら、音価の範囲内で次の音と切り離されて聞こえるように、音の長さを決める必要があります。音価の80%?50%?30%?
これは、音楽の流れる速さが緩やかであれば、ひとつひとつ細かく設定することに深い意味を託すことができるでしょう。Prestoのように速いならば、あまり細やかに表現したところで、音の長さのささいな違いなどは無意味なものになってしまうかもしれません。
流れが速いなら、シンプルな表現をすると割りきってもいいように思います。
どんなクレッシェンド?
クレッシェンドの始まりは、上り坂に例えると「坂の始まり」=「ここから先が上り坂になる」という場所なので、まだ平地と同じ高さです。
クレッシェンドの書き終わりで、山頂に登頂したとすると、疲れたからそこで一休みなのか、噴火口だから恐る恐る覗き込むのか、それとも登り切った自分に酔いしれてしまうか……いろいろあることでしょう。クレッシェンドの終わったときにどんな音符が、楽譜に書かれているのか注意深く読みましょう。
クレッシェンドのあとに、デクレッシェンド(ディミヌエンド)が書いてある場合は要注意です。クレッシェンドを終えてから、強さ・緊張・興奮・快活のようなものをみなぎらせておくことで、そのあとのデクレッシェンド(ディミヌエンド)を際だたせることができます。
いちろーたはこう思う
クレッシェンド、ディミヌエンドは
- 書いてあったら、無理矢理にでも強調する
- 書いてなかったら、自然な流れで強弱があっていい
これらを抑止するのが「semple piano」や「semple forte」ということの意図だと思うんです。
クレッシェンドの始まりは「いままでのまま」ということが、Yさんには新しいことでした。楽譜の見え方が変わってきましたね。