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弦楽器奏者なら知っておきたいブレスのこと「ブレスはボウイングを邪魔する?!」

2017/09/18

弓毛を弦に運ぶいちろーたを、下から仰ぎ見る写真

弦楽器!ブレスして!

 アマオケ合奏などでよくあるのですが、音の入りが合わないときに、「ブレスして!」「呼吸を合わせろ!」という指示を受けることがあります。

 たしかに一定の効き目がある声掛けなのです。しかし、副作用もあることを自覚している人は少ないのではないでしょうか。

 今回は、弦楽器奏者にとって「ブレスして!」がもたらす害悪の可能性について言及します。

 「ブレスして!」という呼びかけが引き起こす害悪の例を1つだけ先に書きます。ブレスしてノドを固めてしまったら、ボウイングも固まっちゃうんです。

 では、どうしてそんなことがおきるのでしょうか。それには、カラダの複雑な仕組みが関わっています。

「ブレス!」が役立つのはなぜ?

 はじめに、なぜ「ブレスして!」が、弦楽器演奏において有用なのかを確かめておきましょう。声を使って歌うことが、呼吸のための仕組みに全面的に依存していることと深い関係があります。

 弦楽器演奏において、楽器に歌わせるためには、まず自らが歌えるようにすることも重要です。その意味において、自分が歌えるために「ブレス!」を言い聞かせることは、演奏によい影響を与えることができます。

「ブレス!」といわれて、実際は何をしている?

 歌うためにブレスしているはずなんですが、「ブレスして!」というと、みなさんの多くが最初にするのは息を吐くことではなく、息を吸うことをしています。

 声に出して歌うときに必要なのは、息を吸うことではなく、吐き出して声帯を震わせることです。ですが、吸うことに気を取られて、じゃあ、吸い込んだ息をどうやって歌に活かそうか、どう歌うためにその息を吸ったんでしょうか?ということをすっかり忘れてしまうこともあるようです。

 「ブレス!」と言われたら、「あなた、いま、どうやって歌おうとしてる?」と置き換えてみるといいかもしれません。……どうやって歌おうとしているかを思い出すための号令が「ブレス!」だと思ってみるようなつもりで。

「ブレスして!」は仮の教え

 このように、役に立つはずの「ブレス!」ですが、バイオリンをはじめとする弦楽器の演奏では、楽器を鳴らす働きはありません。その意味で、呼吸を振動源に用いない弦楽器奏者にとって、「ブレスして!」は仮の教えです。方便です。百歩譲って、「使うならよく良く考えて使いましょう」ということにしたいものです。

 《嘘も方便》といいます。ある場面では効能をもたらしますが、つねに効能をもたらすとは限りません。それが《方便》ということなんです。

 ちなみに、《方便》とは仮の教えという意味があります。家を建てる時のことに例えると、方便というのは足場にあたります。家ができてしまったら、足場はお役御免です。取り払う必要があります。またすぐに修理するために足場が必要なら、足場を組みっぱなしでもいいですけど、一年中修理ばかりしている家には住みたくないものです。

よかった、ブレスはぼくらを助けてくれるんだ!

 「ブレス!」は、弦楽器演奏をより音楽的なものにするために役立つものです。ですから、なおさら、演奏するときには、呼吸そのものが直接に弦楽器を鳴り響かせる働きをしているのではないことを、知っておいて欲しいのです。

 いうなれば、弦楽器演奏における呼吸の働きとは、楽器が鳴り響くことを間接的に支えることなのです。

本題…ブレスがボウイングを邪魔する可能性

 ブレス(呼吸)や歌うことに関わる体の動きは、残念ながら外からは分かりにくいものです。

 でも嬉しいことに、解剖学のおかげで、ブレスや歌に関する筋肉が体中のいろんなところに繋がっていて、思いがけない影響を与え合っているということはわかります。

呼吸が腕の動きに影響する例

 私たち弦楽器奏者が関心を持てそうな、呼吸と腕の動きのつながりを示すいくつかの例を考えてみましょう。

骨格模型ヘンリーくんといちろーたの写真

ノドのあたり

 バッサリ結論だけ先に書きます。ノドを固めると、ボウイングも固まっちゃいます。それだけです。詳しく説明していきましょう。

 ノドに、舌骨(ぜっこつ)という骨があります。場所は、すごく大雑把ですが、ノドボトケのもうちょっと上のほう。舌骨がどんな骨かというと、ベロの付け根がそこから生えてます。舌骨そのものは、ノドにあるんですが、首の骨とはつながっていないそうです。不思議な仕掛けでそこにぶら下がっているんですねぇ。

 その舌骨からはたくさんの細かい筋肉が生えていて、上半身のあちこちと結び合っています。舌骨から生えている筋肉の名前を列挙してみますね。いくつあるんでしょうか。

舌骨イラスト『新・動きの解剖学』87ページより『新動きの解剖学』より

*舌骨の上側

    (よみがなが読みにくいので、区切りの点を入れてみました)

  1. 舌骨舌筋(ぜっこつ・ぜつきん)
  2. オトガイ舌骨筋(おとがい・ぜっこつきん)
  3. 顎舌骨筋(がく・ぜっこつきん)
  4. 顎二腹筋(がく・にふくきん)
  5. 茎突舌骨筋(けいとつ・ぜっこつきん)

*舌骨の下側

  1. 胸骨舌骨筋(きょうこつ・ぜっこつきん)
  2. 甲状舌骨筋(こうじょう・ぜっこつきん)
  3. 肩甲舌骨筋(けんこう・ぜっこつきん)

 ここで、ちょっと注意深く見てほしいことがあります。筋肉の名前には法則性があるんです。筋肉のスタート地点とゴール地点がそのまま名前になってます……基本的には。

 上に書いた筋肉たちの名前は、ほとんど「○○舌骨筋」とか「舌骨○○筋」です。面白いのが「○○」の部分、つまり、つながってる相手です。ちょっと並べてみます。その影響は、頭・口の中・胸・肩・腕などにまで及ぶことがおわかりいただける……はずです!

舌骨舌筋
舌骨舌筋は、舌を凸状にする筋肉ですが、凸にするのはなかなか難しい技です。したがって、この筋肉を感じることは後方に引くことと、下制する事です。
舌骨舌筋(ぜっこつぜっきん)-筋肉.guide

オトガイ舌骨筋
喉の下を膨らますという言葉がありますが、この筋肉が働いて膨らみます。
オトガイ舌骨筋(おとがいぜっこつきん)-筋肉.guide

顎舌骨筋
力強く意識して顎を引くと、この筋肉がしっかりと緊張して、下顎の下面が硬くなるのが触診できます。
顎舌骨筋(がくぜつこつきん)-筋肉.guide

顎二腹筋
顎ニ腹筋は、舌骨が固定されている時は、下顎を引き寄せるように働き、物を飲み込む時は、舌骨を挙上します。
顎ニ腹筋(がくにふくきん)-筋肉.guide

茎突舌骨筋
唾を飲み込む時や、咽頭部を狭めるような運動で、舌骨が持ち上がるのが触診できます。このときに緊張します。
茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん)-筋肉.guide

胸骨舌骨筋
胸骨柄・胸鎖関節・第一肋骨の軟骨部の後面に付着。
胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)-筋肉.guide

甲状舌骨筋
舌骨の引き下げ。甲状軟骨を引き上げる。
甲状舌骨筋(こうじょうぜっこつきん)-筋肉.guide

甲状軟骨というのは気管をガードするカブトのようなもので、一般的にノドボトケと言われているものだそうです。

肩甲舌骨筋
肩甲舌骨筋は、細く判りにくい筋肉です。片側の奥歯を噛み締めて、同側の広頚筋を緊張させると、肩甲骨は、僅かに上方に移動するのがわかります。この時に、肩甲舌骨筋に緊張が生じます。触診するのは、非常に困難です。
肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)-筋肉.guide

 やたら引用してきましたが、これらの筋肉は、ノドや口の中を動かそうとしたときに、なんかしらの動きをするみたいなんです。

 たとえば、肩甲舌骨筋なんていうのは、肩甲骨とつながっていますから、肩の動きに干渉してくる可能性があるんですね。こうした、腕を動かすためではないはずの筋肉たちが、腕の動きに影響を与えている。……という可能性はあるわけです。

「このへんが動きの急所『AO関節』です」と指し示しているいちろーたの写真

「じゃあ、どうすればいいの?」

 じゃあ、邪魔されることなく、動かしたいように腕を動かすには、いったいどうしたらいいんでしょうね?

 私たちのカラダには……思いを動きに変えるほんの小さなきっかけを生み出すための、動きのカギになる関節があるんです。

 それはどこにあるでしょうか。そして、それは動けるんです。

 ヒントは、上のガイコツさん。

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出典

 記事中のイラストを下記書籍から抜粋しました(87ページ)


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