カール・フレッシュ音階システムをひもといてみよう《Carl Flesch "Das Skalen System"》大事なことを見落としていませんか?

2014/01/27

 音階練習はお好きですか?どんな音階教本をお使いでしょうか?

 では、その音階教本をどのように使っていますか?何のために、その音階を使って音を奏でていますか?

 「どんな音楽作品を演奏するにも音階練習は役に立つ」「限られた時間で、効率よくトレーニングするなら音階練習が最適だ」と教え込まれた人も多いかもしれません。

 せっかく取り組むなら「カール・フレッシュ」という人が、どんな狙いでこの音階練習システムを作りあげたのかを考えてみてはいかがでしょうか?

音階教本の王様?!「カール・フレッシュ」

 ヴァイオリニストなら、だいたい誰でも知っている音階教本のひとつ。それが「カール・フレッシュ」の音階教本。全部で120ページにわたって、音階の楽譜例がずらりズラズラと並んでいます。

 120ページもある音階のパターンをどうやって使いこなせばいいんでしょうか?でも、ご心配なく。120ページもの音階教本を残した人ですから、どう使えばいいかという説明書も書いてくれてあります。何が書いてあるか気になりませんか?

「練習にあたっての注意事項」から

 カール・フレッシュが書いた注意書きの日本語版がありますので、その一部分だけをご紹介しておきます。きっと練習の役に立つはずです。

1. この音階練習の目的は、正しい音程で弾けるようになること、あるいは指の動きを良くすることにあります。第一の場合は間違った音を正しながらゆっくりと、第二の場合は速く練習すること。

[In English]
1. The System of Scales provides exercises ezually serviceable for intornation and facility. In the former case it is practiced slowly, to allow of perfecting the intornation, in the latter case rapidly.

フレッシュ : 音階教本/リース&エルラー社バイオリン教本より

 これを読んで、何かお気づきになったことはありますか?

さて、「正しい音程」をどう身につけますか?

 この第1条を読んだ私には素朴な疑問が浮かびました。なぜって、カール・フレッシュ氏は「正しい音程」をどうやって身につければよいかということの詳細には言及していないのです。(すくなくともこの『スケールシステム』の中では)

 バイオリン演奏指導の大ベテランであれば、どの教材をどのように用いればよいかをご存知であることでしょう。そのような優れた指導者に出会い、レッスンを受けることができたら生徒さんは大きく可能性をひらいていくことができます。

 私・いちろーたは「すぐれた指導者」と「めちゃくちゃ優れた指導者」との違いがどこにあるのかを解き明かしたくて、こうした記事を書いています。

 ところで、カールフレッシュの注意書きは全部で8ヶ条あります。気になる方は購入してみてくださいね。カールフレッシュが正しい音程(イントネーション)についてどう考えていたか、どんな練習方法を考えていたかは、現在入手困難となってしまった『ヴァイオリン演奏の技法 上巻』に記述があるようです。読んでみたいものです。

 弦楽器のイントネーション(音程)については、その名もズバリの解説書もありますので、興味をもたれた方は、こちらの『弦楽器のイントネーション』も参考になると思いますが、あいにく絶版らしいです。我が家でご覧いただけます。

 音程に関しての教材として、本稿執筆現在入手しやすいもののオススメの音階教本としてはSimon Fischerによる『Scales and Scale Studies』があります。音程をとるときに、何の音をガイドにして音階を組み立てればよいかが、順序立てて編集されていますので、使いやすいと思います。

 教則本の総合システムとして考えると、セヴシックというのはよく出来ているなぁと感心します。でも、どこに何が書いてあるか、どんなときにそれを使えばいいかということを弁える必要があるということに思い至るのです。指導者自身の研鑽はいつの時代も欠かせないものですね。

今回取りあげた本(引用順)

▼カールフレッシュ音階教本(スケールシステム)

▼弦楽器のイントネーション

▼Simon Fischer - Scales and Scale Studies
(音程のとり方がわかりやすい音階教本)

▼セヴシック

-カールフレッシュの《ヴァイオリン演奏の技法》