弦楽器演奏のフレージング、何をどう気をつけたらいいの?どうトレーニングしたらいいの?と思うわけですが、カール・フレッシュはひとことでこのように言っています。
もしも生徒が習慣的に非音楽的フレージングを行うようであったならば、最初に彼にそのフレーズを歌わせてみるがよい。
『ヴァイオリン演奏の技法(下)』108ページ
あっけないほど簡単なことです。たしかに、私もよく歌わされました。でも、どうして歌うことで弦楽器奏者のフレージングをトレーニングする効き目が出るのでしょうか。
「ちょっと歌ってみて」がフレージングに効く理由
なぜ、歌うことで弦楽器奏者のフレージングが変わるのでしょうか。
じつは、カール・フレッシュはその根拠にも言及しています。さすが大教育者ですね!こんなふうに書いています。
正直なもので、咽頭はヴァイオリニストの悪い癖を知らない。楽器という仲介物のない咽頭と意識の結合が、とりもなおさず芸術に対する意欲から芸術の実施への摩擦のない移行を保証するのである。
『ヴァイオリン演奏の技法(下)』108ページ
運弓法と指使いが適切なフレージングをつくる
もうひとつ、カール・フレッシュが書いていることがあるので紹介しておきます。フレージングが、運弓法と指使いと深く関わっているということを言っています。
ヴァイオリンに関する限り、フレージングとアーティキュレーションは非常に密接に相互に依存している。だから、非論理的なアーティキュレーションは、必然的に不正なフレージングを惹き起こす。これに対して、正しい運弓法と指使いは、原則として必ず適切なフレージングを保証する。
『ヴァイオリン演奏の技法(下)』108ページ
《正しい》運弓法と指使いとはなんでしょう?
正しい運弓法、正しい指使いとはどんなものをいうのでしょうか。
運弓法とは、音を作り出すために必要な弓毛の動きをつくるにふさわしい腕の動かしかたを基礎として実現するものです。
指使いとは、カーレフレッシュの言葉を借りるなら「運指法とは、ある一定の音列を捉える指の選択を意味する」ということです。これもまた、意志にもとずいて腕を動かすという基礎があるからこそ、なりたつものです。
弓使いと指使い、両腕に関するあらゆるテクニックは《腕の使いかた》を土台として発展するものです。ですから、《腕の使いかた》が十分に習得できていないならば、遅かれ早かれ上達の行き詰まりとなって奏者を苦しめてしまうのです。
こうした《腕の使いかた》を変えるヒントになればとの思いを込めて、これまでにもブログを書いてきました。これからも書いてまいります。
体験レッスンやSkypeでの相談セッションも始めました。詳しくはお問い合わせフォームからご連絡下さい。
カール・フレッシュについて
カール・フレッシュといえば音階教本の代名詞というくらいの存在です。これが有名なわけです。
毛嫌いされることも多い「カール・フレッシュ」の名前ですが、バイブルとも呼ばれる本を書き残してくれています。それが『ヴァイオリン演奏の技法(上)』と『ヴァイオリン演奏の技法(下)』です。
今回は、弦楽器奏者のフレージングをどうトレーニングしたらよいかということについて、ちょっとだけ考えてみました。カール・フレッシュの『ヴァイオリン演奏の技法(下)』には、ヴァイオリン演奏技法の応用について書かれています。つまり、演奏する実際の場で、どのように技法を選んで使えばよいのか、どんなことに気をつければよいのか、ほかの楽器とバイオリンとの違いはなにか、といったことが事細かに記されているのです。
バイオリン演奏で困ったことに行きあたったら、この『ヴァイオリン演奏の技法』を開いて研究すれば答えが書いてある……というくらいの書物です。
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