バイオリニストは、誰でもバイオリン病にかかっています。
――バイオリンが好きだというだけでバイオリン病です。
――「私にはバイオリンしかないから」と、好きでもないのにバイオリニストを続ける人もいるのです。これもバイオリン病かもしれません
でも、今回はカラダの使いかたの「バイオリン病」についてです。
「バイオリンうで」……典型的なバイオリン病
「バイオリンうで」……初めて聞く言葉でしょうか?「テニスひじ」の仲間です。同じ仲間には「バレリーナ立ち」「モデル歩き」というのがあります。
「バイオリンうで」のほかにも、バイオリン病はあります。
バイオリン首、バイオリン肩、バイオリン腰、バイオリンあご、バイオリン背中、バイオリン立ち……。
人によって、程度の差はありますが、バイオリンの練習をすればするほど、こうしたクセが身についていきます。クセがいい具合に組み合わされば、演奏に利益をもたらすテクニックとして功を奏します。ですが、ちょっとした組み合わせ方の違いで、演奏を妨げる害毒となります。
たとえば、バイオリンを手に持って歩いているときは、腕が自由でステキな振る舞いなのに、楽器を構えた途端に、わざわざ腕を使いにくくしてしまっている人がいます。
たとえば、チューニングをしているときは、すてきな音が出ていて、カラダの使いかたも奏法も見事であるのに、楽曲の演奏が始めようと楽器と弓を準備した途端に動きがコチコチに凝り固まってしまう人がいます。
たとえば、先生が「楽器をあげなさい」とアドバイスをくれたのを聞いて、背中を後ろに反らせる人がいます……楽器をあげるには腕を使えばいいのですが、腕がじゅうぶんに動けないような使いかたをしているためです。
素晴らしい音楽のレッスンを受けているのなら、その音楽を表現できるようになってもらいたいし、高度に洗練されたバイオリンのテクニックを習得したのなら、それを必要なときに何の障害もなく使いこなせるようであってもらいたい……そう願ってやみません。