新社会人Yさんの悩み……「学生時代ほど練習ができなくなった」
あなたは、練習時間や場所をどうやって確保していますか?
今回受けた相談は、就職して生活のリズムが変わってしまい、これまで通りには練習ができなくなってしまったというご相談です。
新社会人Yさんの悩み……「学生時代ほど練習ができなくなった」
大学時代にはオーケストラで演奏をしてきました。この春に就職しましたが、これからも演奏を続けたいと思って、アマチュアオーケストラに参加しています。
会社に就職したら、学生時代ほど自由に練習できなくなってしまいました。仕事は多少忙しくなっても練習する時間はあるんですが、アパート住まいなのでバイオリンの音を出すわけにもいかないのです。こういう状況なんですが、どうやったら上達できるんでしょうか?
演奏したい気持ちを守り育てよう
安心してください。上達する方法は、バイオリンを使って音を出すだけではありません。もちろん、バイオリンにまったく触らずに上達するのは、ふつうに考えると無理があります。でも、上達する方法は、バイオリンに触って音を出すだけではないんです。そのことをいっしょに考えてみませんか?
本題に入る前に、私が言っておきたいことがあります。それは、あなたが「演奏したい!」という思いをすでに持っていることが何よりも素晴らしいということなんです。その真剣な切実な思いが上達のために必要な工夫をみつける原動力になります。練習方法を工夫することも大切なことですが、それより大事なコトは「音楽が好きだ」という気持ちや、「なんて美しいんだろう!」と芸術に感動する心そのものをケアするために時間を使ってみることを考えてみてはいかがでしょうか。たとえば、音楽会や展覧会へ出かけてゆく計画を立ててみたりしてもよいでしょう。
このことは、よく考えてみてもらいたいと思います。では、本題に入りましょう。
「音を出す」ために必要なことは何だろう?
多くのバイオリン奏者がカン違いをしてしまうことがあります。それは、バイオリンをもって音を出していれば練習になる、と思っていることです。その裏返しとして、バイオリンで音を出せないから練習ができないという発想が生まれてしまいます。でも、安心してください。バイオリンを使って音を出せなくても練習ができます。上達する方法は、バイオリンに触って音を出すだけではないんです。
「音を出す準備」と「音を出すこと」を分けてみよう
演奏は、2つの側面から考えることができます。ひとつは音を出すための意図を持つことです。もうひとつは、意図どおりの音を作り出すことです。この2つの側面がぴったりとあったときに、はじめて望み通りの演奏ができるといえます。
Yさんの場合は、仕事を終えて家に帰ったあとは音を出すことができません。ですから、音を出さずにできることを考えましょう。そして、オーケストラのリハーサルなど音を出してもいいときに「意図どおりの音を作ること」に挑戦してみてほしいのです。
「音を出す意図」を磨くには
では、「音を出すための意図を持つ」とは、どんなことをすればいいのでしょうか。ヒントとして、私がやっていることをいくつか書いてみますので、ご自分の状況に合わせて作りかえてみてください。
- 楽譜を読む
- オーケストラで演奏するなら、これがいちばん大事なことかもしれません。目の前にある楽譜をみたときに、音楽が思い浮かぶように読んでいきます。テンポ通りに読み進めなくたっていいんです。音楽が思い浮かぶまで先へ進まなくたってよいのです。
題材は、オーケストラでやることになっている作品でも構いません。パート譜を読んでもいいですし、オーケストラの総譜を読んでみるのもよいでしょうね。
音階教本を使っても良いと思います。音楽が思い浮かべられたなら、その音楽のために左手の指をどこからどこへ動かせばいいかを思いうかべます。そして、右手も同じです。思い浮かべた音楽のために、弦と弓の毛をどう触れ合わせてみようか考えてみるんです。
- 演奏の実例に触れる
- 楽譜を読むことをやってみたなら、じっさいに他の人がどんな演奏をしているかを見たりきいたりしてもよいでしょう。これは、答え合わせのためにやるのではなくて、「こんな演奏もオッケーなんだ!」というつもりで参考にするのがよいと思います。
- 楽曲について調べる
- 楽曲について調べてみましょう。いつごろ書かれたのか、どこで書かれたのか、誰のために書かれたのか。これを調べるだけでも、演奏が変わります。演奏のためのアイデアも豊かなものになります。さらに進めていくと、どうしてその出版社から出版されたのか、なぜその楽器編成を選んだのか、そのころは何が流行していたのかなどを調べてみるのもよいでしょう。
どうでしょうか。すこしは試してみようと思えるアイデアは見つかりましたか?思うままに書いてみました。質問や試してみてのご感想があればお聞かせください。