本番で「ミスった!」ときに僕がやってみて助かったこと(2) お客様を味方につけるために
2014/01/30
私はこう考えるようにしている。聴衆は、私の演奏に期待してわざわざコンサートを聴きに来てくれる親切な人々だ――と。
メニューイン著『ヴァイオリンを愛する友へ』(75ページ)
2014年1月13日、わたしにとって、この年の2回めの演奏でした。
1回の練習と、当日のリハーサルを済ませて迎えた本番は、スタンディングオベーションが湧いたほどの熱狂的な喝采を受けることができました。
大好評だった演奏でしたが、実際には演奏が中断しそうなピンチもあったんです。わたしのなかに起きたネガティブな思いをどうやって、演奏を続けようという思いへ切り替えることができたのでしょうか?
「誰に届けたくて演奏しているの?」
「音がずれた!?」……演奏中に音程を修正する必要が生じたり、リズムの微調整をしようとおもうことがあります。そういうときに、演奏者である自分に向かって、どんな言葉をかけてあげられるでしょうか?ふだん演奏するときに、どんな言葉をかけていますか?
わたしが自分という演奏者に向けて語りかけるのは「誰にこの演奏を届けたいの?」です。
視野が広がる問いかけ「いま、自分のまわりには誰がいる?」
公開演奏をするときには、自分のまわりにどんな人がいるでしょうか。どんな人がいるのが見えますか?何色の服を着ているのでしょうか?照明は何色でしょう?エアコンは効いているでしょうか?……自分がどんな場所にいるか、なんのために、いまここで演奏しているのかを思い出すキッカケとして「誰のために演奏しているんだっけ?」と問いかけることは役に立ちました。
自分のやり方を見つけてみよう
演奏中ずっと「誰のために?」とたずねなくてもいいんです。いま楽譜のどの部分からどの部分へ向かって演奏しているのか、という事を問いかけてもよいでしょう。正しい問いかけ方、きまった問いかけ方はありません。
練習ならば、自分だけを観察していてもいいのです。ですが、練習のときにも観察をしてみましょう。いまこの文章を読んでいる時にも。自分が何を見ようとしているのか、その周りにどんなことが見えているのか。どう座っているか、どう立っているか……。
つまり聴衆へのアプローチとして私が考える最高の姿勢は、聴衆を協力者と考えることと、音楽を分かち合おうとする精神なのである。
メニューイン著『ヴァイオリンを愛する友へ』(75ページ)
第3回に続きます。「あなたが注目される理由とは?」について書いてみます。お楽しみに!