第九演奏会の準備をすすめている大学生Tさんから、相談を受けました。
Tさんは第二バイオリンのトップをされています。
第九の4楽章の「M」から、3連符がキレイに弾けるようになりたい
私は問い返してみました。「《キレイ》って、どういうことなんだろうね?」と。Tさんにとっては、思いがけない問いかけだったようで少しの間考えていました。そして、次のように答えてくれました。
とばし弓で弾こうとして、それができていないので、それをできるようになりたい
実験してみました!
実際に演奏するところを見せてもらいました。弓は跳んでいますが、左手との連携がうまくいっていないようです。
実験1. レガートでひいてみる
左手を意識してもらうために、レガートでなるべく音をつなげてひくようにお願いしました。
「左手が準備をして、その準備された弦を弓の毛でこするために右手を動かす」……これを、私がTさんの隣にいて、本当に《言い聞かせながら》やりました。
実験2. 開放弦で移弦だけやってみる
右手に必要な運動を理解するために、飛ばし弓での移弦をやってみました。開放弦A線とE線を3連符で1セットずつ(AAAEEEAAAEEEAAA……、EEEAAAEEEAAAEEE……)いったりきたり。手間取るようだったら、2セットずつ(AAAAAAEEEEEEAAAAAA……、EEEEEEAAAAAAEEEEEE……)
実験3. いろいろな移弦をやってみる
移弦には、2つのパターンがあります。ひとつは隣り合わせの弦どうしでする移弦、これは実験2で練習しました。もうひとつは、離れた弦どうしでの移弦です。
たとえば、バイオリンの場合は、離れた弦どうしでの移弦は次の3種類です。G線とA線、D線とE線、G線とE線。
移弦のときに一番大切なことは「弓の毛の角度を変える」ということです。このとき気をつけるのは「駒と平行」「弦と弓毛は直角」の2つです。この2つを保ちつつ弓毛の角度を変えるのが、移弦に必要なことです。
これだけで音がくっきり
3つの実験をしながら、ここに書いてあることを解説しただけでTさんの音は、音の変わり目がハッキリして、かすれていた音がかすれなくなりました。リズムの狂いがなくなりました。