こんな人のための記事です
「親指が痛くなる」「小指がつっぱる」「前腕が痛くなる」「指弓ができない」「スタッカートの切れが悪い」「トレモロが続くと力が入っちゃう」などなど、脱力したいのにできない……というあなたのための記事です。
今回は、「とにかく脱力したい」「疲れない持ち方をマスターしたい」という声にお応えしてきたやりかたをご紹介します。私がレッスンでお伝えしてきた中で実績を出してきたやり方ですので参考にしてもらえたらうれしいです。
「弓を持つ手」の実験3題
準備するもの
ペンを用意します。ある程度の長さのある鉛筆でもオッケー。
用意したペンを、弓を持つ側の手で持ちます。(多くの人は弓を右手で持つでしょうから、以後の説明は、右手にペンを持っているとして説明します。)
これで準備完了。実験を始めます。
やりかた
- 実験1「絶対に動かないように持つ」
- ペンを右手に持ったまま、左手でペンを抜き取ります。
*このとき、「絶対にペンを抜き取られないように」右手でペンを持っていてください。 - 実験2「抜き取られてもいいように持つ」
- ペンを右手に持ったまま、左手でペンを抜き取ります。
*このとき、「ペンを抜き取られてもいいように」右手でペンを持っていてください。 - 実験3「ペンについていくように持つ」
- ペンを右手に持ったまま、左手でペンを抜き取ります。
*このとき、「ペンについていくように」右手でペンを持っていてください。
解説動画
【バイオリン応援団】右腕・ボウイングの脱力エクササイズ【実演と解説】 …… を YouTube で見る
振り返り
● 3つの持ちかたには、どんな違いがありましたか?
● 持っている時の、体の動きやすさ、呼吸のしやすさ、ペンを持つ手の疲れ具合、楽しかったか苦しかったか……3つのやり方を上・中・下でそれぞれ評価すると、どの持ち方が高評価になりましたか?
● どの持ち方が好きでしょうか?弓を持つとしたら、どの持ち方で持っていたいですか?
「脱力」を自分のものにするために……
「脱力」といっても、ひとそれぞれに考え方や実践の仕方が違います。大事なのは、自分にとってどんな意味があるのか、自分の行動にとってどんな貢献がもたらされるのかという観点を持つことではないでしょうか。
弓の持ちかたをを助ける(かもしれない)アイデアを3つ紹介しておきたいと思います。
弓の持ちかたを助ける3つのアイデア
- ● 持つためには力が必要
- →弓を持つためには、力を使う必要があります。力を完全に抜いたままで、弓を持って動かすことができるでしょうか?……不可能ではないかもしれませんが、弓を動かすためには力を使わないでいるのは、諦めたほうが良さそうです。
- ● 音を出すとき、弓の重さは弦が引き受ける
- →音を出すとき、弓の重さは弦が引き受けてくれます。弓の毛を弦にのせて、全部預けてみましょう。このとき、もしも、弓の重さを手で全部持ちあげてしまったら何が起こるでしょうか?弓が弦から浮き上がります。……「脱力ができない」と悩んでいる人の多くは、弓を弦から浮かせておいて、なおかつ、自分の手のチカラで弓を弦へ押し付けています。そのために、せっかくの弓の性能が活かせなくなっていて、弓がしてくれるはずの仕事を、ぜんぶ自分の手と腕だけでやろうとして過労しているのです。いますぐ、弓を弦に預けてしまいましょう。そう、弦にのせてしまえばいいんです。あとは弦と弓がやってくれます。
- ● 手はバランスを調整する
- →手はバランスを調整します。弓の重さを弦に預けっぱなしで音を出していると、弓元にきたときは弓先側が床へ向かって落ちていこうとします。弓が弦の上に居続けられるように、手で弓の動きを作りかえていきます。指だけでなく、肩や腕など、体全体がこのバランス調整に関わっていくことが大切です。でも気をつけてください。あくまでも、弦と弓は《自分たちで関係性を調整する働き》をもっています。手は、弦と弓の動きを尊重しましょう。