弓の持ち方(3) 《腕の重みをどう乗せる?》みんなのカン違い……人差し指と小指の使いかた♪アレクサンダー・テクニーク研修生が読み解く【カール・フレッシュ】

2014/01/30

弓の持ち方(3)……《腕の重みを乗せる》には?人差し指のヒミツ教えます

ボウイング・人差し指は何をする?

 ボウイングをする時、人差し指にどんな役割をお願いしていますか?

 私が人差し指にお願いしていることは、《弓をどう動かすかを決めてください》ということです。つまり、人差し指にボウイングの指導権を持たせるということです。中指がこれを補佐します。

 音を作り出すという一連の動作の中で、人差し指は弓を動かす《かじ取り》を任されることになるのです。奏者のイメージした音にあわせて、具体的に弓の動きを変えるための働きをするのが人差し指です。

 このことに関連して、カール・フレッシュは『ヴァイオリン演奏の技法 上巻』のなかで次のように述べています。

弓の先で圧力を加えるのは人差指であり、根元で弓全体を持ち上げるのは小指である。人差し指は廻内(Pronation 内側への廻転)と結びついており、小指は廻外(Supination 外側への廻転)と結びついている。(中略)私は、指に圧力を加えている間、前膊の廻転は全然意識されないとさえ主張する。(中略)
 従って人差指は主として音を生み出し作用をし、小指は音を抑制する作用をする。ヴァイオリン演奏の技法 上巻』70ページ

 ここで注目したいのは「指に圧力を加えている間、前膊の廻転は全然意識されない」という部分です。弓から弦への圧力を生み出すために、身体のどこを圧力の発生源とするかということを考えるヒントがここにあります。

人差し指が弓にしていること

 カール・フレッシュは「指が圧力を生む」とは書いていません。「指に圧力を加える」と書いています。ここが重要です。そして、多くの初心者が間違ってしまうポイントでもあります。

 指は何をしているのか。それは、音を出すための弦への圧力を、弓身へ伝えることをしています。

 指の仕事は腕が作った動き・力を伝えることです。さらにいうと、弓が受け取った絃の動き・力を、腕へ体全体へと伝えることが指の仕事です。

弓への圧力はどこで作るか?

 弓から弦への圧力は、主に肘の運動《回内と回外》によって作られます。

 肘の運動についてちょっと説明しましょう。肘の運動は大きくわけると2種類あります。ひとつは《屈曲・伸展》です……屈曲(くっきょく=曲げる)、伸展(しんてん=のばす)。もうひとつが《回内・回外》です。このブログを愛読してくださっているみなさんは、もうご存知かもしれませんが、回内(かいない、廻内とも書きます)とは、肘から先を内側に回転させる動きのことです。回外(かいがい、廻外とも書きます)は、肘から先を外側に回転させる動きのことです。



肘の《回内・回外》で圧力を作るには?

 指に圧力を加えて、弓に圧力を届けるためにはどうしたらよいのでしょうか?

 実験的練習のために、弓のかわりにペンを持ってみます。弓を持つ時と同じように、指をペンに触れさせて、弓を持ったときの形をつくってみましょう。

 弓と同じような持ち方でペンを持てたなら、ペンの向きを変えてみます。ペンの向きを変えるために、人差し指の向きを手のひらごと・手首ごと変えてゆきます。指そのものの形を変えなくてもペンの向きを変えることができるのがわかりますか?

 これが、弓の圧力を生む秘訣です。厳密には、肩や上腕や背中、アタマだって参加しています。でも、手首や手のひらを回転させる《回外・回内》という動きは肘の周りで起こす運動だということを知っておいて下さいね。(厳密には、手首や手のひらを回転させたいなら、肘のほかに肩を動かすことでもできたりしますが、補助的なものと思っておいてくださいね)

弦に腕の重さをのせる?!

弦に腕の重さをのせる

 こんな言葉を聞いたことがありますか?弓から弦へ向かう圧力を増してほしいときに、わたしも実際に使っていた言葉でした。今は使いません。なぜなら、弓から弦へ向かう圧力を増すための方法は、何通りもあるからです。しかも、具体的に何をどこからどこへ向けて、どう動かしたらいいかわからない言葉だからです。

 ですから、弓への圧力を加えたいなら、手のひらを外側に向ける(手首から先を反時計回りにひねる)とおぼえておいて、試してみてくださいね。

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 本記事はクラリネット奏者・ありよしなおこさんのご協力で執筆しています。ありよしなおこさんのブログキラキラ☆クラリネットを読む

-カールフレッシュの《ヴァイオリン演奏の技法》