「もっと音量とパワフルな音色がほしい!」
G線を奏でる動作、どんなことに気をつけてますか?
バイオリンのG線を奏でる時に、どんなことに気をつけていますか?
「弦に、弓毛を食い込ませる」
「弓を弦に沈める」
「腕の重さを弦に乗せて」
「楽器の裏板を鳴らすように」
「体全体を使って」
……などなど
バイオリンの最低音を奏でるG線は、長さあたりの質量が大きいために、鳴らすために運動エネルギーをたくさん使います。バイオリンのG線が鳴らしにくいとされるのはこのためです。
どうすれば鳴らしにくいものを鳴り響かせることができるか、先生がたは知恵を絞って言葉や、手取り足取りしながら、指導にあたっておられることでしょう。
なのに、G線がうまく弾けないと悩んでいる人が、いつまでたってもいなくならない。なぜでしょうか?
G線を奏でる動作、よく見かける残念なやりかた
G線を演奏しようとするバイオリニストをみていると、いくつかの残念な動作に遭遇することがあります。
もっとも見かける、典型的な動作は「弓とともに、楽器も沈み込む」です。
どうして、このような動作が起こるか、やっている本人にインタビューしてみたところ、「弓を沈み込ませる」「腕の重さを弦に乗せる」というアドバイスを実行しようとしていた人がほとんどでした。
重たいG線に対して、弓で強大な運動エネルギーを与えようとして、「弓を弦に向かわせる」ことをやろうとしてカラダの全体が床のある方向へ移動してしまったために、弓が弦に向かうと同時に楽器が弓から逃げる方向(=床のある方向)へ移動してしまい、せっかくのエネルギーが、全部相殺されてしまって、意味のない運動をしたことになってしまいます。
しかも、ほとんどの場合、体全体が床のある方向へズレてしまうので、弓毛と弦のコントロールも精度が甘くなってしまっています。
では、どうすればG線を効率良くひけるのか?
弓の毛を運ぶのは、腕だけでやりましょう。腕とは、弓にふれている指先から手首、肘、二の腕、脇や肩の後ろ、鎖骨も含みます。
なんでこんなふうに言うかというと、腕と体の軸とで仕事を分担したいからです。弓毛を弦に向かわせる仕事は、腕にまかせておきましょう。体の軸(アタマや胴体)の仕事は、腕を動かしやすくバランスをとることだからです。
特に、今回のテーマである「音量とパワー」を稼ぐには、腕を力強く素早く動かせることが必要です。そのためには、腕を動かす筋肉が働きやすい状況を作る事が必要になります。その意味でも、体の軸(アタマや胴体)には、全身のバランスを整えることをさせておいて、腕が力を発揮しやすい状況を作るために働いてもらいましょう。
よく「カラダ全部で弾きなさい」というアドバイスも耳にしますが、これも言葉が一人歩きしています。「カラダ全部で弾きなさい」の真意というのは、今回の場合で言うと「腕には腕の仕事をさせなさい。残りのカラダは、腕が動きやすいように働かせなさい」という意味ではないでしょうか?アドバイスを受けたら、自分が納得できるように意味を見つけて、演奏の動作に置き換えていきましょう。
ボウイングは、右腕だけではない
右腕は、弓毛を弦に向かわせます。これはわかりますよね。では、左腕には何をさせますか?簡単です。左腕は、弦を弓毛に向かわせます。バカバカしく思えるなら、なおさら試して体験してほしいです。
というわけで、気をつけたいことは3つ。
1. 音を作るためにはたらくのは、腕。
2. 右腕は、弓毛を弦に向かわせる。
3. 左腕は、弦を弓毛に向かわせる。
今日からは、この3つを気をつけてボウイングに励みましょう!
まとめ
ボウイングで大事なことは、サウンドポイントをいかにして作るかです。弓毛と弦がどのように出会って欲しいのかを考えて、その出会いの時間と場所をつくるために、奏者のカラダでできることは何かを考えて実行する……これがボウイング・運弓法です。