「楽譜を読む」とは、どういうことなんだろうか?
と、考える機会がありました。
つい最近の、生徒さんとのレッスンに、共通するテーマが「楽譜を読む」に直結することだったからです。
お二人が続けて持ってきてくれたのは、
「まだ手に入れたばかりの楽譜にどう取り組めばいいか」
という疑問でした。
みなさんに質問があります。
もしも、いまとつぜん見たことのない楽譜を手わたされたら、あなたはどうしますか?何をしますか?
《見たことのないもの》への反応を観察しよう
あなたに試してほしいことがあります。
初見の楽譜、つまり、見たことのない楽譜をみたときに、自分が何をしているのか、《やっている動き》つまり《観察して見つけた、自分の動き》について観察しましょう。
見たことのない楽譜のどこを見ているか、どこを触っているか、そのとき何を心のなかでつぶやいているか……こうしたことを、声に出します。
スポーツ中継のアナウンサーのように、自分がやっている動きについて、自分で気がついた《自分の動き》を言葉にして声に出しましょう。
これが、ひとつの実験です。観察のトレーニングでもあります。
はじめは、何を声に出したらいいか、わからずに身動きがとれなくなるかもしれません。私が、はじめて、これを試した時がそうでした。
「身動きできないとき」「身動きができるとき」どう違ったのか?
私の体験を少し紹介します。
実況中継トレーニングをはじめて試したときは、身動きが取れず、苦笑いをしてしまいました。そのとき思っていたのは、今振り返ってみると、こんなことでした。
いま、楽譜を見ていて、
実験のために、楽器を持ち上げようとしたけど
このやり方でいいんだっけ?って疑いを持ったとたん、動きが止まって
あれっ、何を声に出すんだったかわからなくなってきた
動きがかたまったままだ、ああどうしよう……
お気づきになりましたか?《自分が感じたこと》に注意を奪われていて、やっている動きから注意が逸れてしまっているために、本来やりたかったことが進まなくなってしまいました。
では、身動きが取れるようにするには、どうすればいいのでしょうか。私が試してうまくいったやりかたは、実況中継を「観察できた動きだけ言えばいい」と開き直るようにしました。
いまも、このやり方に沿って観察のトレーニングをしています。
楽譜の読み方そのものについて
今回は、初見の楽譜を読むときの自分のありかたを観察することについてかきました。もちろん、楽譜を読むためにどうしたらいいかという方法論はいくらでもあります。そういったさまざまな方法論をいかすためには、「いま、自分は何をしているのか?」を意識的に観察できるようにしておいたほうがよいのではないでしょうか。
いちろーたは、なんで、こんなことをおもったのか
楽譜の読みかた、どんなことに気をつけていますか?
・リズム
・強弱
・アーティキュレーション
・音色
・テンポ
……いろんな着眼点がありますね。
では、楽譜を読む自分自身には、どんな注意を払っているでしょうか?
楽器を演奏するテクニックを考えるとき、自分という楽器をどう演奏するかという視座を持つことが、大変な影響力を持つのと同じように、
楽譜を読むテクニックについて考えるときもまた、自分という楽譜を読む主体をどう扱うかという視座を持つことが、その質に影響を与えるのではないでしょうか。
これが、コーチングで言う「スコトーマを外す」……既存の枠組みから抜け出して、盲点にきづく……ということなのかもしれません。