【バイオリニストのよくあるカン違い】「肩を使いなさい!」……アップボウ(上げ弓)のとき、右肩を持ちあげていい理由・持ちあげてはいけない理由

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 バイオリニストのみなさん、アップボウのときに、右肩を無意識に持ちあげていませんか?

 弓を動かすとき、アップボウで……特に《弓のまんなかから元にかけて》……肩を持ち上げることをしているひとを見かけることがあります。みなさんのまわりではどうですか?ご自身ではどうでしょうか?

「肩で弓を持ちあげる」というカン違い

 弓を動かすとき、肩の上げ下げは役に立ちません。

 もうちょっと正確に言います。肩を動かして得られるのはなにかというと、弓の運動量ではありません。肩を使うことで得られるのは《弓の動きの自由度》が増えるということです。弓の動きの自由度がました結果として、運動量の増大が得られます。

実験してみよう!

 肩の動きと、ボウイングの関連性を確かめる実験を紹介します。

【実験1】ふつうにボウイング

 楽器をかまえて、ふつうにボウイングしてみましょう。開放弦でかまいません。

 どんなことに気づきましたか?特にないでしょうか。ふだんと変わりがないかもしれませんね。

【実験2】肩は動いてはいけない

 楽器を構えます。ボウイングするんですが、次のように思ってください。

肩は動いてはいけない

どんなことに気づきましたか?
弓の動く速さや、弦と弓毛の接触の様子はどう変わりましたか?
弓先や弓元での動きはどう変わりましたか?
弓を動かしている自分のことは、なにか気が付きましたか?何が見えていたか、何が聞こえていたか、体の動きの早さや大きさは【実験1】とくらべてどう変化しましたか?

【実験3】肩も動いていい

 楽器を構えます。こんどは、「肩は、うごいていい」と思ってボウイングしてみましょう。

肩は、動いていい

どんなことに気づきましたか?
弓を動かすための労力、弦と弓毛の接触の様子はどう変わりましたか?
弓先や弓元での動きはどう変わりましたか?
弓を動かしている自分のことは、なにか気が付きましたか?何が見えていたか、何が聞こえていたか、体の動きの早さや大きさは【実験2】とくらべてどう変化しましたか?

 実験はここまでです。

「肩を使う」ってどういうこと?

 そもそも、肩という言葉は、色んな意味を持っています。ですから、注意深く意味を読み取る必要があります。

 たとえば、バイオリンの先生が「肩を使いなさい」と言っているときには、「肩を上げ下げしなさい」という意味で言っているとは限りません。どうして「肩を使いなさい」と言われたのかを確かめることが必要ではないでしょうか。

 バイオリン演奏指導において「肩を使いなさい」という言葉が使われるのは、「肩が止まっているようにみえる」という場合が多いようです。

演奏の不都合をみつけた時に、
「肩が止まっているように見える」
と思ったなら、

「なぜ、肩を止めているのだろうか」
と、考えることが必要です。

・観察
・分析
・計画
・実験

という手順を踏んで、演奏を変える手順を進めてゆきます。

観察→「肩が動いていないように見える」

分析→「肩を動かしてはいけない、と思っているかもしれない」

計画→「肩を動かしてもいい……というアイデアを使うよう提案してみよう」

実験→「新しいアイデアを使うとなにが起こるか、みてみよう」

 新しいアイデアをどう考えればいいのでしょうか。

その方針として役に立つことが1つあります。

「否定形の命令文を、肯定形に言いかえる」です。

もうちょっと言うと
「○○してはいけない」という言い方を
「○○してもいい」という言い方で表現してみる、ということです。

たとえば、「肩を動かしてはいけない」であれば、
「肩を動かしてもいい」という具合です。

 みなさん!ヴァイオリンの技術を身につけてゆくときに、「○○してもいい。でも、○○しないように」といいきかせながら練習していませんか?

 ぜひ、普段のちょっとしたこと……楽器をかまえるとき、弓を返すとき、ポジションを変えるときなどに、こうした小さな小さな「○○してはいけない」という声をかけていないかどうか、調べてみてくださいね。

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