「クレッシェンドをもっとやりたい!」(Aさん、ヴァイオリン、小学生)【バッハ無伴奏パルティータ第3番から】

クレッシェンドをするには?

「ここのクレッシェンドを、もっとやりたいんです」

 ――なるほど。どうやったらクレッシェンドができるの?

Aさんにむかって私が問いかけることから、この日のレッスンが始まりました。

(どうやったらクレッシェンドができるんだろう)
(えっ?どういうこと???)
Aさんは困惑しながらも考えていました。
――バイオリンに向かって「クレッシェンドしてちょうだい」って言えばクレッシェンドになる?

「ならない……」

――バイオリンをどう使ったらクレッシェンドができる?

「あっ、弓を大きく使う!」

――じゃあ、それでやってみよう!

さっきよりもクレッシェンドは大きくなりました。
ですが、Aさんはご不満のご様子です。

さて、どんなことができるでしょうか?

クレッシェンドの、その先へ

 楽譜をもう一度みてみます。

 クレッシェンドが始まる前にはmf(メゾ・フォルテ)そして、クレッシェンドの先にはf(フォルテ)があります。

――クレッシェンドからフォルテの間は、どうやりたいのかな?

(……どうって、どういうことだろう?)

――クレッシェンドからフォルテの間には何も書いてないでしょう?この何も書いていない部分を「クレッシェンドの続きだと思って大きくし続けたい」か「クレッシェンドが無いからクレッシェンドを終わらせておく」か「それとも別の何か」をするか……

「そこは、小さくしていきたい!」

――なるほど。音形にしたがって自然に小さくするというのも理にかなった選択だと思います。やってみましょう!

むやみにクレッシェンドし続けようとしていたのをやめて、自然な起伏を表現しようとしたことで、クレッシェンドの存在感と、そのあとのフォルテへのつながりに表情が聞こえてきました。

「これで、いいです!」

Aさん自身のオッケーが出ました!よかったね!

楽譜を読むのは「意図を持つ」ため

 Aさんは、この楽曲を暗譜していました。ですが、今回のレッスンで、数回楽譜を読みなおしてもらいました。指でなぞったり、目で追いかけたりしてもらいました。

 そのなかで、「あっ、ここにアクセントがあった!」などの再発見もありました。

 暗譜することは素晴らしいことです。しかし、暗譜すると、記憶のなかにある演奏を再現しようとして「こう演奏しなくてはいけない」と思いがちになることがあります。暗譜できたときにこそ、楽譜を読むことが大切になってくるのではないでしょうか。


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