立奏するバイオリニストのために……アレクサンダー・テクニーク研修生が読み解くカール・フレッシュ「両足の位置」
2014/01/30
バイオリニストのみなさん!座って演奏しますか?立って演奏しますか?
立って演奏したり、立って教えたりすることがあるなら、お役に立てるかもしれません。
立つときに使うもの
ちょっと立ってみてください。立つことができない状況なら今の姿勢のままでいいので「立つ」ことを思い浮かべてみましょう。
立っている時に、足をどう置きましたか?
どうやって置いてもいいです。いま立っていた立ちかたのままでいいので、次のことを観察してみましょう。どうやって立っていましたか?
- 左右の足、付けている?離している?
- 左右の足、どちらかを前に出している?
- 左右の足、どちらのほうに体重をかけている?
- 左右の足、つま先はどこを向けている?
- 左右の足、つま先・かかと……どちらに体重をかけている?
- 左右の足、指先はどれくらい握りしめている?
ふだんバイオリンを立って演奏するときに、こうしたことには気づいていましたか?
もう一度立ってみましょう。そのときに、いまここに書いたことのうち、どれかひとつだけでいいので「足がどうなっているかな?」と気にしてみましょう。立ったときの体にどんな違いがありますか?違いがわからなくても大丈夫です。
ちょっと信じ難いかもしれませんが、「こうやって立ってみよう」と思うだけで立つための動きは変わります。お友だちやお仲間どうしで、お互いが立つ様子を観察しあって、たがいの動きの変化を見つけてみるとわかりやすいですよ。
足も演奏に参加させてみよう!
カール・フレッシュ《ヴァイオリン演奏の技法》より
バイオリニストが足をどう扱えばよいのか――カール・フレッシュは次のように書いています(第1章 基礎技術 - 2 姿勢 - a 両脚の位置)
ヴァイオリン演奏の間上半身の運動そのものは、非常に激しいものである。だから下半身は、上半身の運動に関与しないではおられない。下半身は、重点の一時的移行に伴い、それに相応して運動し、バランスをとり、「ゆすぶって」上半身の運動に応ずるのである。
『ヴァイオリン演奏の技法 上巻』(11ページ)
バイオリンの演奏というのは、基本的には上半身の仕事です。下半身は演奏をできるように支えることが仕事です。
ということは、下半身が演奏を邪魔することもできるんです。ちょっと実験してみませんか?
実験 足で腕を邪魔する!
まず、立ちます。そして、指をこまかくコチョコチョ、くすぐるような動きをしてみましょう。
次に、足の指を1本選んでください。どれでもいいです。その選んだ指を「1ミリも動いてはいけない」と思って、コチョコチョくすぐる動きをしてみてください。何か変わりましたか?動きの速さ、こまかさはどう変わりましたか?
では最後に、「足の指も、その他の体全部も動いていい!」とおもって、コチョコチョくすぐる動きをしてみましょう。
上の3パターンのうち、指を動かしやすかったのはどれでしたか?人によって程度の違いはあると思いますが、ほとんどの人は最後の「足の指も、その他の体全部も動いていい!」と思って動くのが、いちばんやりやすかったのではないでしょうか。
「足も動ける」で行こう
アタマが動けるのと同じように、足も動けます。そして、腕も、背中もお腹も、思い出しきれないほどの、カラダのあちこちも含めた全部が、あなたの演奏を支えてくれます。カラダや、カラダが作る活動、すべての記憶・経験もふくめて……。
足の指ひとつでさえ、上半身の動きの質を変えてしまう影響力を持っています。バイオリニストの演奏というのは、指や腕の動きが作ります。ついつい上半身のトレーニングばかり注目しがちですが、《下半身は演奏を助ける》という考えかたを取り入れてみてはいかがでしょうか。
思い出すだけでいい
そして、自分がやっていること《足をどう使っている?》を知っておくだけで、立つことの質が変わり、演奏の質も変わってくるということも思い出して使ってみてくださいね。