アレクサンダー・テクニーク研修生が読む『ヴァイオリンを愛する友へ』……メニューインはこう言った(1)「弓を持つ」について

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1992年、その人はボクの前に現れた

 脱力って、どうやればいいんだろうか。弓の持ち方をいろんな先輩にダメ出しされてしまった学生時代のボクはすっかり気落ちしていました。いったいどうすればいいんだろう……。

1992年の春、メニューインが日本へやって来た!

 ボクが大学生になった春、メニューインは日本へやって来ました。じつは、そのときまでメニューインという人をボクは知りませんでした。

「誰なんだい、このおじいちゃんは」

 メニューインが書いたという本を、大学の先輩が読ませてくれました。あまりの奇抜さに、その2冊の本にボクは夢中になってしまいました。

 クラシックの音楽家といえば、燕尾服だと思っていたのに、ジャージ姿のメニューインがヨガのポーズをキメていたり(『ヴァイオリンを愛する友へ』にはヨガのポーズをはじめとした氏自身が生活に取り入れている習慣が紹介されているのだ!)、聞きなれない言葉だらけでようやく楽譜例が出てきたと思ってひいてみても、なんの役に立つのかさっぱりわからない……自分で本を読んで謎解きをする必要があったんです(『メニューイン/ヴァイオリン奏法』は、そもそもビデオ教材のサブテキストなのでこれだけでは読み解くのが大変!!)

 当時、たった1ページの発音のための練習を1ヶ月ものあいだ、朝から晩まで繰り返していたことはいまでも覚えています。とりつかれたように練習していました。「この本で勉強したからってメニューインの弟子です、なんて言うなよ」と仲間にからかわれたくらいです。

たった1行の魔法の言葉

 ところで、右手が弓を持つということについて、メニューインはこう書いています。

弓をとろう。できるだけ軽く持つことがたいせつだ――生まれたての雛鳥を取り上げる感覚に似ている。繊細さはまさに同じだ。
ヴァイオリンを愛する友へ』(120ページ)

 うまれたばかりの雛鳥を手にとったことがある人なら、これでも通じるかもしれませんね。あなたなら、弓の持ち方をどう教えますか?

比喩表現には気をつけよう!

 比喩表現は、強力です。適切な使いかたをするために、気をつけると良いことがあります。それは、比喩を使うならカラダの外側のものに使うということです。

 比喩表現を避けたほうがいいのは、体の内側で起きていることを説明するときです。カラダの内部のことは目に見えないので、比喩を事実と思い込んでしまう危険性が高まるからです。

 ですから、比喩を用いるならメニューインがやったように、《弓》という《体の外にあるもの》を《生まれたばかりの雛鳥》という別のイメージに置き換えるのが望ましい使いかたです。

 ついついやってしまうクセを壊すキッカケを作るには、比喩を使う代わりに、実際に別のものを持ってみることもおすすめします。たとえば弓を持つ代わりに、くつしたを持ってみる。あるいは、弓の先と根もとを逆さまに持ってみる……などです。

実際にやってみました!


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